So-net無料ブログ作成
検索選択

「風立ちぬ」鑑賞 [映画]



kazetachinu_poster1a.JPG




今朝、宮崎駿監督が「風立ちぬ」を最後に引退、というニュ-スが流れました。
う~ん、残念。
それだけに、「風立ちぬ」という作品には、
アニメ製作者としてベストを尽くし、人間として語りつくしたいという想いが
詰まっていたんだなあ・・・と。

夏、8月というと、
日本人が眼を背けてはならない日中戦争、太平洋戦争が
ドキュメンタリ-等で取り上げられる機会も多いですよね。
この夏は特に「風立ちぬ」の主人公モデルが、
零戦設計者の堀越二郎だと聞いていたので、
予習ってことじゃないですけど、映画の前に
零戦搭乗者の見つめた太平洋戦争というNHKの番組を見ました。
零戦誕生から敗戦まで、
搭乗員だった方の証言や堀越二郎の手記を織り交ぜながら
当時の写真や映像も多数盛り込まれた番組でした。

「風立ちぬ」の堀越二郎は、あくまで宮崎監督の描き出した劇中人物で、
実際の堀越二郎そのままではないですが、
当時、三菱重工で堀越と共に働いていた方によると、
「寡黙、長身痩躯のジェントルマンで、
 どこにああいう閃きやエネルギ-があるのか、
 物事の決断が誠に竹を割ったような人。
 逸材、めったにいない人だと思った。」
これは、映画の二郎像にも表れていました。

飛行機が本当に好きで、美しい飛行機を作りたいという純粋な願いを持ちながら、
時代が本意ではない方向に二郎をひきずっていく。
映画ではそういう葛藤を、時空を超えた夢の場面として描いていました。


実際の二郎本人の手記に、
新型戦闘機開発にあたって海軍の要求といいうのが、
当時の航空界の常識では全く虫のよい要求で、
できるできないの議論を終わらせるためには、
「設計者が現実に要求通りの物を作ってみせる以外にはない、
 そうする以外に残された道はないことを、深く心に刻んだ。」と、書かれてあります。

三菱重工入社すぐのヨ-ロッパ、アメリカ留学を経験したことで、
海外の技術力、工業力、特に補給力と比べ、
日本が劣っている現実を痛感していた二郎にしてみれば、
米英との開戦は「大変なことになった・・」というのが本音だったようです。
映画でも、「この国はどうしてこんなに貧乏なんだ・・」と友人と話す場面がありました。

向かうところ敵なしだった零戦も、
アメリカの対零戦対策を駆使した新型戦闘機の出現や、
戦死による熟練搭乗員の不足などによって形勢不利に。
当初要求されなかった装備を海軍に要求され、
二郎本人は手記でこう言っています。
「大本営発表のニュ-スが事実をいかに糊塗しようとも、
このような零戦改修の要求は、そのまま零戦の苦戦ぶりを、
そして日本軍の窮状を雄弁に物語っていた。
次々と分不相応な防弾や火力を背負わされて飛び立っていく零戦の姿は、
まさに この戦いにおける日本の行く末を暗示していた。」

映画では、零戦による特攻作戦の悲惨さは直接描かれていません。
あえて、そうしたのでしょう。
夢というか回想の中で、
自分の作り出した零戦が「一機も帰って来なかった・・・」と、ひと言つぶやかせています。
実際の二郎は、
「多くの前途ある若者が、けっして帰ることのない体当たり攻撃に出発していく、
その情景を想像しただけで胸がいっぱいになってしまう。
彼らが微笑みながら乗り込んで行った飛行機が 零戦だった。」と手記に綴っています。

映画で描かれる、もう一方の世界、
二郎と菜穂子の恋愛、これがまた純粋でひたむきで。
ヒロインが結核で、高原のサナトリウムで療養するが亡くなってしまうとか、
堀辰雄の自伝的小説が下地になっているゆえに、
堀辰雄にも敬意を込めてとしたのでしょうねえ。
菜穂子は、もっともっと生きたかっただろうと切なくなるし、
残された二郎には彼女の分まで生きて欲しい、
きっと彼女が見守っているから~と願わずにいられないし。

宮崎監督が「風立ちぬ」製作を決めたとき、
周囲からは、戦争の道具を作った人の映画を作るのか?
トトロのようなファンタジ-を作ればいいじゃないか?という意見も出たそうです。
それでも、今だから作らなければと決意したのは、
なんだか、日本が戦争を始めた頃の匂いがするということでしょうか。

「歴史は時代という装いをして繰り返す」という言葉もありますしね。

今までの宮崎アニメのような、子供も楽しめるファンタジ-じゃなかったのは確かで、
近くの座席に座った家族連れの子供は、最初から最後までずう~っと退屈して愚図りどおし(笑)
これで引退とか聞くと、
宮崎監督、オンザエッジに自分を追い込んで作ったのかなと思います。

私は、素直に感動しました。


















nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。